医療の観点からみた取組みの必要性
住まい環境が、健康に影響することは種々のデータから明らかになっている。海外では、住まいの環境、こと室温に関して法律を規定する国もあり、WHOも冬季の室内温度を18度以上に保つことを勧告している。また住宅政策を社会保障政策として位置付ける国々もあると聞く。
一方我が国では、既存住宅の断熱性の悪さから冬季の室温、特に寝室の温度が低いことは周知の事実である。このことが冬季の循環器疾病(心筋梗塞、脳卒中、など)等が多く発生する原因となっている。医療・介護関係者として患者の身体の情報を得ることは非常に重要であるが、実は周囲の環境、室温の重要性は漠とは理解しているが、いざ患者を診察しはじめると、そのことを忘れてしまうこともあるのではないか。
超高齢化が進行する日本において、在宅医療の重要性は高まっており、そこに参加する職種も増加している。高齢者が住む住宅環境(室温等)を積極的に改善しようとする医療・介護関係者が増えることが望ましい。
(出典:2023年6月14日ジェルコ15期社員定時総会記念講演「WHOが勧告する健康な住宅普及に向けた医療・建築連携の重要性」の公演資料より一部抜粋・要約)

医療技術が進歩し平均寿命が延びる一方で、「健康寿命」がそれ以上に伸びなければ、日常生活に制限のある期間が拡大します。結果的に生活の質が低下するだけでなく、家族が介護をする負担も大きくなります。
断熱工事は性能発揮および身体の健康の観点からも家全体に施すのが望ましく、耐震工事についても住宅強度の観点から全面耐震化が理想です。しかし、当面の費用負担の問題や工事期間の問題で全面改装に踏み切るハードルは高いのが実情です。そんな課題を解決できる手段としてまずは「ひと部屋からの断熱工事・耐震工事」なのではないでしょうか。生活の中で主に過ごすひと部屋を断熱・耐震することにより健康が保たれるとともに、地震の際には命を守るシェルターそしての役割を果たしてくれます。
