医療関係者の方

ひと部屋からはじめる断熱・耐震リフォーム

ひと部屋断熱改修の必要性

健康改善の手段としての推進を

健康日本21(第三次)に建築・住宅分野との連携が明記されました。健康増進に室温対策が有効であることが報告されています。医療技術が進歩し平均寿命が延びる一方で、「健康寿命」が平均寿命以上に伸びなければ、日常生活に制限のある期間が拡大します。結果的に本人の生活の質が低下するだけでなく、介護をする家族の負担も大きくなります。

また、医療費や介護給付費など社会保障費の抑制が課題となっています。

健康寿命を延ばすための取り組みは多岐にわたりますが、生活習慣の改善などに加えて、ヒートショックや熱中症など気温の変化への対応として、住まいの環境を整えることの重要性が認識されつつあり、健康日本21(第三次)に住宅関連との連携が取り込まれました。

断熱性能が高い部屋を確保することで、気温の変化に伴う健康への影響を緩和することができ、健康寿命を延ばすことにつながります。

医療関係者の皆様には日頃の訪問医療・診療の際に、治療方法や薬など健康改善の手段として、「ひと部屋断熱リフォーム」を考えていただきたく思っております。

WHO(世界保健機関)も「住宅新築・改修時の断熱工事」を勧告

国内および海外のデータからも、寒冷な地域の冬季死亡増加率が低いことがわかります。寒冷な地域では、冬季においても健康を維持するための室温が保たれていることがこのような結果に表れています。
WHO(世界保健機関)は、室温18度以上を保つことを強く勧告しています。世界では、最低室温規定のような、住環境としての質の評価に温度を加える流れもあります。

冬季屋内の温度差によるヒートショックを原因として健康を害し、介護の必要な状態になる高齢の方々が少なくありません。既に高齢化社会に突入している日本では、要介護者は400万人を超え、介護費用(保険)も7兆円/年を超えているのが現状です。住宅内のヒートショック事故の原因を放置すれば、介護状態になってしまう"不幸なお年寄り"が激増するだけでなく、これを支えるための現役世代の社会的費用負担も膨大なものになってしまいます。
また、健康性への影響は高齢者のヒートショックだけではなく、子供から成人まで、咳・のどの痛みといった症状や、様々なアレルギーの発症が断熱化された住宅では減少する可能性が高いことが示されてきています。

住宅を断熱化することは、省エネルギー性を向上するだけでなく、社会全体で健康な人を増やし、予病や予防介護につながる可能性をもっています。そのため、国、地方自治体、民間が協働して、贅沢では無く、生命を守る最低限の「部屋」を確保するための取り組みを進め、全ての国民への普及を目指していく必要があります。 ※2019年3月一般社団法人 健康・省エネ住宅を推進する国民会議発表資料より転載http://www.kokumin-kaigi.jp/images/whats202109-img00.pdf

医療の観点からみた取組みの必要性

住まい環境が、健康に影響することは種々のデータから明らかになっている。海外では、住まいの環境、こと室温に関して法律を規定する国もあり、WHOも冬季の室内温度を18度以上に保つことを勧告している。また住宅政策を社会保障政策として位置付ける国々もあると聞く。

一方我が国では、既存住宅の断熱性の悪さから冬季の室温、特に寝室の温度が低いことは周知の事実である。このことが冬季の循環器疾病(心筋梗塞、脳卒中、など)等が多く発生する原因となっている。医療・介護関係者として患者の身体の情報を得ることは非常に重要であるが、実は周囲の環境、室温の重要性は漠とは理解しているが、いざ患者を診察しはじめると、そのことを忘れてしまうこともあるのではないか。

超高齢化が進行する日本において、在宅医療の重要性は高まっており、そこに参加する職種も増加している。高齢者が住む住宅環境(室温等)を積極的に改善しようとする医療・介護関係者が増えることが望ましい。

(出典:2023年6月14日ジェルコ15期社員定時総会記念講演「WHOが勧告する健康な住宅普及に向けた医療・建築連携の重要性」の公演資料より一部抜粋・要約)

医療法人社団聡伸会
理事長 今村 聡
(元日本医師会副会長)